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症例:84歳,男性
主訴:呼吸困難
現病歴:4か月前,呼吸困難があり,耳鼻科を受診し喉頭癌の診断を受けた。その後,心電図異常(完全右脚ブロック,心房性期外収縮)および高血圧.(170/90mmHg)をしてきされ,徳島大学第二内科外来で経過観察を行うこととなった。外来経過観察中,肺炎を発症したため,入院の上,抗生薬による治療を受け,解熱したが心不全によると思われる呼吸困難が持続した。
入院時の胸部X線写真および肺炎発症前の心電図を下に示す。
入院時胸部X線写真 | 肺炎発症前の心電図(4月25日) |
この心電図では,洞調律で,QRS軸は正常軸,QRS間隔が延長し,V1のQRS波はrsR’型を示し,1V5,6に幅広いS波, aVRに幅広いlate R'波を認め,完全右脚ブロックの所見を示す。U, aVFではST低下はないが,扁平に経過し,やや急峻にT波に移行しており,冠不全の可能性も示唆される。
下図は肺炎発症8日目(5月20日)の心電図である。右は肺炎消褪後の心電図である。V4-6のR波の減高が著しく,ことにV4のそれが著明で,V4-6のST部はドーム状の上昇を示し、陰性T波に移行している。これらの所見は左室前壁の著しい起電力の減少を反映する所見であり,心筋梗塞を疑わせる。
肺炎発症8日後の心電図(5月20日) |
また下図は肺炎消褪後の6月22日の心電図である。この心電図ではV3-6のR波の振幅は大分増大し,肺炎発症前の心電図に近づいている。またU,V,aVF,V3-6などの諸誘導で左右対称的な陰性T波(冠性T波)を示す。
これらの一連の心電図経過をどのように診断するか?
肺炎快復後の心電図(6月22日) |