第1章 ベクトル心電図とは?

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 洞結節で作られた興奮は、一定の順序にしたがって心房内、次いで心室内を広がって行き、心室作業心筋に刺激を伝える。心室を例にとると、下図のように興奮が広がるが、心室筋各部で生じた興奮は各瞬時毎に合成され、1つのベクトルとして表現される(合成心起電力ベクトル)。心室筋における興奮の進行につれて、次々と生じるこのような各瞬時合成心起電力ベクトルの一端を心臓の電気的中心(Einthovenの正三角形の中心)に集め、これらのベクトルの他端の軌跡を描いたものがベクトル心電図である。

 上図は心室内における興奮伝播の進行と、それに伴う各瞬時合成心起電力ベクトルを示す。心室筋の興奮は、この図の如く 1→6 と進行する。上図こには1〜6の代表的ベクトルを示すが、実際には連続的に無数の合成心起電力ベクトルが次々と作られる。これらのベクトルは大きさと方向を持ち、空間的(立体的)特性を持っている。これらのベクトルの一端を心臓の電気的中心に置き、他端の軌跡を描かせると1つの環(loop)が描かれる。これがベクトル環(vector loop)である。

 ベクトルの1端を1つの点(心臓の電気的中心)に集め、他端の軌跡を描いたものがベクトル心電図であるが、この点をベクトル心電図の原点と呼び、通常の心電図の基線に相当する。このようにしてベクトル心電図では、心電図のP、QRS、T波に対応してP、QRS、T環が描かれる。P、QRS、T環は、それぞれ、心房脱分極、心室脱分極および心室再分極に対応している。


 ベクトル心電図の角度の記載には、通常、下記のような座標系(reference frame)を用いる。

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