第43例 第1度房室ブロック+第2度房室ブロック
(Wenckebach型)

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第43例 :
症例:87歳、男性
臨床的事項:特に循環器的な愁訴はない。軽症高血圧(155/95mmHg)、高脂血症、軽症糖尿病がある。

質問:
1.PP間隔は規則的に出現しているか?リズムは?
2.QRS軸は?
3.PR間隔は?
4.本例では今後どのように診断を進めるべきであるか?

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第43例解説:

 不整脈の心電図を見る際には、P波が最も分かり易い誘導で検討します。通常、最大Pベクトルは第2誘導の誘導軸と平行ですから、第2誘導で最もP波が分かりやすい場合が多いため、不整脈の分析も通常、第2誘導で行います。

 まずPP間隔を見ていきますと、P波は規則的に出現しており、基本リズムは正常洞調律です。この正常洞調律の英語は、「oridinary sinus rythm」で、「normal sinus rhythm」ではありません。 「oridinary sinus rythm」と言う言葉の意味 は、洞興奮頻度が60〜99/分の心臓リズムという意味です。  

 PR間隔を見ていきますと、1のPR間隔に比べて、2では延長し、3のP波は心室 群を伴っていません(心室収縮脱落, ventricukar dropped beat)。すなわち、ここで房室ブロックが出現しています。その次のP波(4)のPR間隔は再び1と同様に なっています。

 このように、PR間隔が漸次延長し、遂に脱落し、その後は再びPR 間隔が正常に戻り、以後、同様の所見を繰り返すリズムを房室間Wenckebach周期と言 います。  赤で矢印を付けたP波は心室群を伴っていません。心室収縮脱落後の最初のPR間隔 は0.25秒と延長しています(第1度房室ブロック)。  

 すなわち、本例の心電図診断は下記の如くなります。
   1.正常洞調律
  2.正常QRS軸
  3.第1度房室ブロック
  4.第2度房室ブロック(Type 1,または房室間Wenckebach周期)
  5.固有心筋の心筋傷害所見はない。

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