第42例 心臓に器質的異常がない例に見られた心電図異常

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第42例
症例:45歳、男性
臨床的事項:何ら循環器系の自覚症状はない。人間ドック検診で下図のような心電図を得た。

質問

1.リズムは?
2.QRS軸は?
3.QRS間隔は?
4.P波の書県は?
5.QRS波の所見は?
6.本例の心電図所見は?
7.考えられる臨床診断は?
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第42例解説:

1.リズム:洞調律です。
2.QRS軸:正常QRS軸。
3.心電図所見:
  V1のQRSはrSR’型、V2はrSR'S' 型を示す。QRS間隔は0.12秒以 内ですが、V1のQRS波形は完全右脚ブロックに類似しています。このような場合は、不完全右脚ブロックと診断します。 V1,2のQRS波形およびSTへの移行部はsharpである点がBrugada型心電図 (saddle-back型)とは異なっています。V1, 2のP波はやや尖鋭ですから、軽度の右房負荷がある可能性は否定できません。しかし、不完全右脚ブロック例の全てで、V1、2がrsR'型を示すわけではなく、 rSr' 型程度にとどまる場合がむしろ多っく認められます。  V5,6でも深いS波があり、胸部誘導における陽性波(R波)と陰性波(S波)の振幅が等しい誘導(移行帯波形を示す誘導)は本例ではV5です(通常はV3)。従って心臓長軸周りの時針式回転が認められます。
4.心電図診断
 1) 洞調律
 2) 正常QRS軸(右軸偏位傾向)
 3) 不完全右脚ブロック
 4) 心臓長軸周りの時針式回転(軽度)

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