第25例 間入性心室性期外収縮

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第25例解説:
症例:69歳、男性
主訴:脈拍の結滞
臨床的事項:以前から時々、脈拍が結滞することがあったが、1週間前から、その頻度が増加するようになった。脈拍結滞時に、多少、胸苦しい感じがする。 理学的所見:正常。血圧132/86mmHg。 下図は、本例の心電図である


質問:
  1) リズムは?
  2) QRS軸は?
  3) 不整脈があるが、その診断は?
  4) この不整脈は心臓のどの部分から生じたと考えられるか?
  5) この不整脈の臨床的意義は?(治療が必要かどうか?、また予後は?

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第25例解説:

1)基本リズムは?
 基本リズムは洞調律で、心拍数は60/分前後ですから、洞徐脈の傾向と診断されます。変形した心室群が早期に出現していますから心室性期外収縮があります。心室性期外収縮には完全代償性と間入性とがありますが、本例は間入性心室性期外収縮です。

2)QRS軸は?
 基本リズムのQRS軸は左軸偏位を示っしています。

3)不整脈の診断は?  間入性心室性期外収縮

4)不整脈の発生起源?  
 心室性期外収縮のQRS波が第1誘導、V6で陽性であることは、 心起電力ベク トルが右→左方向に向かっていることを意味し、心室期外収縮の発生源は右方にあ ります。  また、第2, 第3, aVF誘導で陽性ですから、心起電力ベクトルは上→下方向に向かっていると考えられ、心室性期外収縮の発生源は上方にあります。 また、V1,2で陰性であることは、心起電力ベクトルは前→後方向に向かっているこ とを意味し、心室性期外収縮の発生源は前方にあると考えられます。  これらを総合して、本例の心室性期外収縮の発生源は心臓の右上前方、すなわち右室基部前方にあると推察されます。

5)この不整脈の臨床的意義は?  
 基本リズムの心室群のP,QRS,ST部、T波に異常がなく、QTc間隔も正常で、器質的心疾患による可能性は低いと考えられます。また、心室性期外収縮の出現時期が先行収縮のT 波の頂点から離れた位置に出現しており、いわゆる受攻期に出現していないために、心室頻拍・心室細動などの悪性不整脈に進展する可能性は低く、機能性と考えられ、予後は良好で、特に治療の必要はありません。

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