7.睡眠時無呼吸症候群

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 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)は、比較的多く見られ、最近、急死の原因の1つとして広く注目されている疾患です。心臓性急死には属しませんが、急死を考える上で重要な疾患ですから、ここで説明しておきます。

 1.定義
  睡眠時に見る10秒以上続く換気停止を睡眠時無呼吸(sleep apnea)といいます。睡眠中に高い「いびき」をかく人に多く見られます。睡眠時無呼吸症候群とは、7時間の夜間睡眠中に少なくとも30回以上の10秒間以上続く無呼吸が、REM睡眠期 (逆説睡眠期)のみならず、NREM(non-REM)睡眠期(徐波睡眠期)にも認められる場合をいいます。

 ここで、睡眠についての基礎的なことを少し説明します。私どもの睡眠は単調なものではなく、REM睡眠期とnon-REM睡眠期とが一夜の間に交互に数回繰り返して出現しています。REMというのは、rapid eye movementの略語で、この睡眠期には眼球が覚醒期のように急速に動くので、このような名称が付けられています。これらの睡眠時相の区別には、脳波、心電図、眼球運動、筋電図、胸郭運動、鼻腔・口腔での空気の流れなどを同時記録する事が必要である(ポリソムノグラフィー)。
 NREM睡眠期: T期(入眠期), U期(軽睡眠期)、V期(中等度睡眠期)、W期(深睡眠期)の4期に分けられます。
 

猫の睡眠各期と脳波 睡眠経過とレム睡眠
覚醒期,各睡眠期における猫の体位と
筋電図、眼電図、脳波
一夜の睡眠経過:縦軸:nonREM睡眠期、
太い横線:REM睡眠

 NRM睡眠期:被検者はよく眠っており、頸や四肢の筋肉の緊張はなくなりますが、速い眼球運動(rapid eye movement, REM)を認めます。REM睡眠期は、通常、non-REM睡眠(徐波睡眠)第W期に続いて起こり、約90分の周期で一夜に3〜6回出現します。成人では、一夜の全睡眠時間の内、   REM睡眠期が20〜25%を占めています。

 2. 頻度
  一般人口の1.26%、+20%以上の肥満者の2/3、50歳以上の年齢層の37.5%に認められます。男性>女性。
 3.分類
  鼻腔・口腔での空気の流れ(気流)および胸郭・腹壁の動きの有無により下表のように3型に分けます。

睡眠無呼吸の3種と特徴

 これらの3型の鑑別方法を下表に示します。 

睡眠時無呼吸の型
/ 中枢型 閉塞型 混合型
鼻腔・口腔での気流
胸郭・腹壁の呼吸運動 最初は(-)、後半は(+)

下図は、私どもが経験した睡眠時無呼吸症候群症例に実施した睡眠時多誘導同時記録を示します。

REM睡眠期の無呼吸発作(ポリソムノグラフイー)
REM睡眠期に見られた無呼吸発作(ポリソムノグラフィー)

 4. 症状
 睡眠中の無呼吸発作、いびき、睡眠中の体動異常、起床時の頭痛、昼間斜眠、夜間不眠、記憶力・集中力低下、抑鬱、遺尿など。
 5.増悪因子

肥満 /
高齢 /
上気道疾患  扁桃・アデノイド肥大、小顎症、鼻中隔彎曲症、鼻閉
肺疾患 /
内分泌疾患  末端肥大症、甲状腺機能低下症、閉経
神経・筋疾患  Shy-Drager症候群、脳梗塞、進行性筋ジストロフィー
心疾患 /
薬剤性  眠剤、安定剤、アルコールなど

6.臨床的意義
 睡眠時無呼吸症候群は、上記のような臨床症状を示す以外に、不整脈を誘発し、突然死する危険があることが指摘されています。

 7. 診断
 病歴、ことに高年者・肥満者で睡眠中に「いびき」をかく人に上記の症状を認めた場合には、睡眠中のポリソムノグラフィー記録を行い、脳波、呼吸曲線(気流、腹壁、胸郭運動)、心電図、筋電図、眼球運動などを同時記録することが必要です。

 8. 治療
 1)肥満があれば体重調節を行います。
 2)扁桃肥大、アデノイド肥大などがあれば、その摘出術をすすめます。
 3)睡眠時には側臥位臥床するように指導します。

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