3.乳幼児突然死症候群 (SIDS, sudden infant death syndrome)

ポックリ病へ 循環器病目次へ
いろんな原因による急死目次へ

 乳幼児突然死症候群の頻度は、出生1,000人当たり0.5人と推定されています。この病気は乳幼児期、ことに生後6カ月未満の乳児に好発し、この時期を乗り越えることが出来れば、その後の一生は健康に生活出来るという点で注目するべき疾患です。
1.概念 
 厚生省SIDS研究班(1995)によると、「それまでの健康状態および既往症から、その死亡が予測できず、しかも死亡状況および剖検によっても その原因が明らかでなく、乳幼児に突然死をもたらす症候群」と定義されます。

2.分類
 この病態の診断は、除外診断によらなければなりませんので、診断の確からしさにより次の2型に分類されます。
T.乳幼児突然死症候群: 剖検により確認されたもの。
U.乳幼児突然死症候群疑い:死亡状況などから乳幼児突然死症候群と思われるが、剖検が行われなかったもの。

 〔附〕乳幼児突然性危急事態 (apparent life threatening event, ALTE):
 これは、従来、乳幼児突然死症候群の死に至らなかった未然型(near miss SIDS)と考えられていましたが、必ずしも乳幼児突然死症候群(SIDS)とは同一疾患群ではないとの考えから、これとは区別して乳幼児突然性危急事態(ALTE)と呼ばれるようになりました。本症候群は、「それまでの健康状態および既往歴からは死亡が予想できず、しかも観察者に死亡するのではないかと思わせるような無呼吸、チアノーゼ、顔面蒼白、筋緊張低下、呼吸促迫などの発作が起こり、その回復には強い刺激や蘇生術の実施が必要であった者の内、原因が明らかでない場合」と定義されています。

3. 病因、病態
 病因は不明ですが、遷延する慢性低酸素状態や何らかの原因により惹起された無呼吸発作が基本病態で、次いで徐脈、心停止、死亡に至ります。最近は、その原因として脳幹の覚醒反応低下が考えられています。本症を特徴づける病態は次の如くです。
 1) 周産期異常、先天性奇形、代謝異常などによる発育障害がない。
 2) 前病歴に、急性増悪により死亡するような疾患がない。
 3) 発作出現前に、頭部外傷や中毒などの外因がない。
 4) 発作は睡眠中に出現する。

4.疫学的特徴
  (1) 1歳未満、特に6カ月未満に多い。
  (2) 男児にやや多い。
  (3) 睡眠中に発生することが多い。
  (4) 寒い季節に多い。
  (5) 発作出現の数日前に軽い感冒様症状を認めることがある。
  (6) 出生児や人工栄養児に多い。
  (7) 若い母親や妊娠中の医学管理が不十分な母親からの児に多い。

5.予防法ないし育児指導における注意事項
 1) 睡眠時の体位を,仰向け、または横向きとし、下向きにしない。
 2) 母乳で保育する。
 3) 保育環境を暖め過ぎない。
 4) 家族、ことに母親の喫煙を禁じる。
 5) 家族に人工心肺蘇生術の実施法を教育し、もし発作が起こったら早期に実施出来るようにする。
 6) 一度でも発作が起こった乳幼児には、生後6カ月以内は睡眠時に呼吸モニターを装着し、発作出現を早期に把握し、人工蘇生術を早期に実施できるようにする。

SIDS用モニタ
SIDS用の小型呼吸モニター
(坂上正道、渡部登:総合臨床
40(6):1072,1991
)


SIDS endこの頁の最初