1.左室伝導系

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左脚中隔枝ブロック目次へ

 左室伝導系については、Rosenbaumのように左脚前枝・後枝の2枝からなるとする説もあるが、この考えには反対意見も多く、3枝(前枝・後枝・中隔枝)からなるとする説、あるいは扇状分布説などがある。
 左室伝導系が扇状分布を示すとしても, Durrerらのヒト摘出還流心を用いた左室興奮伝播過程の研究から明らかなように、左室心内膜面の興奮は、左室前壁の心室中隔近傍部、心室中隔左室面中央部および左室後壁の心室中隔近傍部の3カ所から始まる。これらの部位はそれぞれ左脚前枝、後枝および中隔枝の分布領域に相当しており、興奮伝播過程の立場からは3枝説と同様であると見なして良い。

 下図は、Durrerらが行ったLangendorf灌流正常ヒト心臓の左心室内膜下筋層の興奮伝播過程を示す。下図の赤い部分が最早期興奮部位で、左右の図共に、左の赤い部位が前枝支配領域、中央が中隔枝支配領域、右が後枝支配領域に相当する。

Langendorf灌流正常ヒト心臓の左室心内膜下筋層の興奮伝播過程と最早期興奮部位

  下図は諸家の左室伝導系についての考え方を示すが、これらは左室伝導系3枝説ないし扇状分布説を裏付けている。

左室伝導系(田原敦) 左室伝導系(RauberKopsch) 左室伝導系(Uhley)
Tawara,S Kopsch,F. Uhley,H.N.,et al。
左室伝導系(Hecht,Kossmann) 左室伝導系(平賀隆)
Hecht,H.H.,Kossmann,G.E. Demoulin,J.c.,Kulbertus,H..E. 平賀 隆

 上述のように、左脚中隔枝の存在は 形態学的に明らかであるにもかかわらず、右脚ブロック、左脚ブロックなどと異なり、左脚中隔枝ブロックの存在は 従来 明らかにされていない。しかし、私どもは次章以下に述べる諸事実に基づき、左脚中隔枝ブロックの臨床例が存在し、心電図的にも特徴的なQRS波の前方成分増大を示す。

(Nakaya Y, Hiraga T:Reassesment of the subudivision block of the left bundle branch. Jap Circ J
45(4):503-516,1981)

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