6.心室内変行伝導を伴う心房性期外収縮のQRS波(QRS環)前方成分増大の出現
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連結期が短い心房性期外収縮の際には、しばしば先行収縮の不応期の影響を受けて、期外収縮の心室群が変形する。これは一種の機能的脚ブロックであり(心室内変行伝導)、心室内興奮伝導障害の研究に役立つ。27歳、男性例で心房性期外収縮の多発と種々の波形の心室内変行伝導を認め、その中に左脚中隔枝ブロックと一致するQRS波(QRS環)前方偏位所見を認めた。これが右脚ブロックによるものではないと考えられる根拠があり、QRS波(環)の前方偏位が、右脚ブロックによらずに、心室内伝導障害の1型として出現することが立証された。
症例:41歳、男性
主訴:心悸亢進
現病歴:3〜4年前から、心悸亢進を感じるようになった。
特記すべき基礎疾患はない。胸部X線写真:正常。下図は、本例に見られた不整脈時のFrank誘導ベクトル心電図構成スカラー心電図である。
X、Y、Z:ベクトル心電図構成スカラー心電図。A:基本リズム、 B〜D:心房性期外収縮で、B、Cは心室内変行伝導を伴う。 Z誘導の極性は、下向きの振れが前方成分、上向きの振れが後方成分を示す。 |
上図では心房性期外収縮が多発している。Dは心室内変行伝導を伴っていないが、B、Cは心室内変行伝導を伴う心房性期外収縮である。BではQRS間隔の延長はないが、Z誘導のQRS波は全て下向きに描かれ、前方成分の著しい増大を認める。Cでは、QRS間隔が増大し、X誘導(T誘導に対応)で幅広いS波があり、Z誘導(V1の逆向き波形)QRS波下降脚に結節形成を認め、完全右脚ブロック型の心室内変行伝導を示す。
下図は、上図の不整脈(心房性期外収縮)における心室内変行伝導を伴う心房性期外収縮のベクトル心電図である。X、Y、Z誘導の内、各2誘導をブラウン管に導き、リサージュ像を合成して、ベクトル心電図を描画した。
A〜C:上のスカラー心電図のA〜Cに対応している。
A:基本リズムのベクトル心電図、、
B:QRS環前方偏位を示す心室内変行伝導を示す心房性期外収縮のベクトル心電図、
C:完全右脚ブロック型の心室内変行伝導を示す心房性期外収縮のベクトル心電図。
上図の説明
BはQRS環前方偏位を示す心室内変行伝導を示す心房性期外収縮のベクトル心電図である。
本例では、右脚ブロックとは異なり、QRS間隔延長を伴わず、QRS波(環)の前方成分の増大を示す型の心室内変行伝導を示す心房性期外収縮を認めた。このことは、心室内伝導障害の1型として、右脚ブロックとは異なり、QRS間隔延長を示さず、QRS波の前方成分増大を示す型の心室内伝導障害の存在を示している。