第27例 心房性期外収縮、発作性心房頻拍short run,心室性期外収縮、変行性心室内伝導

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第27例 :
症例:72歳、男性
主訴:心悸亢進
下図は本例の心電図である。

質問:
1.この不整脈の診断は?

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第27例解説
 本例は簡単な不整脈ですが、誤りやすい点もありますので以下に説明しま す。

1.基本リズムは正常洞調律です。上図Aは本例の基本心周期を示します(0.88秒)。

2.Bに多少変形したP波の早期出現を認め(心房性期外収縮)、非代償性休止期を伴っています。

3.Cに変形したP波の早期出現を認め、同様のP波が合計4個、連続して早期に出現しています。心房性期外収縮の連発または発作性心房頻拍のshort runです。

 Katz  and Pickは、彼らの不整脈教科書の中で、期外収縮が3個又はそれ以上連続して出現した場合を発作性心頻拍と定義しており、Belletは6個以上の場合を発作性心頻拍と呼ぶことを提案しています。すなわち、この心電図はKatzのcriteria によると発作性心房頻拍のshort runという診断になります。

4.問題は、第1,第2の心拍は何であるかという点です。一見すると多源性心室性期外収縮の2連発と思うかも知れません。しかし、Dの心室群のT波の上行脚に結節があります(矢印:F)。この結節と次のP波までの間隔(G)は、基本周期(A)と正確に同一です。

 そのことは、Fと記した心室群DのT波上行脚の結節は洞性P波で、それに続く心室群(E)は洞性興奮が心室に伝達されて生じたものと考えられます。Eの心室群が、他の洞性興奮の心室群と著しく波形が異なるのは、先行収縮の不応期のために心室内変行伝導を起こしたものと考えられます。心室内変行伝導(aberrant ventricular conduction) とは、先行収縮の不応期のために心室内興奮伝導が妨げられ、一種の機能的な脚ブロックを起こしたような機序で心室群が変形した場合を言います。

5.それでは最初の心室群(D)は何でしょうか?これは心室性期外収縮と考えられます。心室性期外収縮がこのような位置に出現し、代償休止期を持たないということは、この期外収縮が間入性心室性期外収縮であると考えられます。  

 以上から、この心電図の診断は下記のようになります。
 1)心房性期外収縮および発作性心房頻拍のshort run
 2)心室性期外収縮(間入性)、それに続く洞性興奮の心室群の変行性心室内伝導

治療は、単に経過観察のみでよいと思います。

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