洞房ブロツク・タイトル

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1.洞房ブロックとは 

 洞房ブロック (sinoatrial block) とは、洞結節の興奮が心房に伝達されるのが障碍される場合をいう。洞房ブロックは、多くの場合、洞不全症候群 (sick sinus syndrome, SSS) の部分的表現として認められる。
 Rubensteinらは、洞不全症候群を次のような3つの病型に分類している。
  T群:持続的な洞徐脈(原因が明らかでない持続的な50/分以下の洞徐脈)、
  U群:洞停止(sinus arrest) または 洞房ブロック、
  V群:徐脈ー頻脈症候群(bradycardia-tachycardia syndrome)

2.洞房ブロックの心電図所見 

  洞房ブロックと洞停止とは異なった病態であるが、実際上、両者を区別できない場合も少なくない。洞停止とは、洞結節の機能が停止した状態をいい、洞房ブロックとは洞結節の興奮の心房への伝達が障害される場合をいう。しかし、臨床的には、洞結節の興奮は心電図では記録できないため、洞結節の機能停止であるのか、あるいは洞結節の興奮の心房への伝達途絶であるのかは、心電図では区別出来ない。

 洞結節の興奮は心電図上には表われず、洞興奮の結果として生じた心房筋の興奮(P波)により、洞結節の機能を間接的に認識している。洞房ブロックの際に,下位中枢の興奮性が亢進すると、PP間隔の軽度の延長があつても、容易に補充収縮が出現し、洞房ブロックの際に見るPP間隔の規則的変化が妨げられ、洞停止と区別出来なくなる

 洞房ブロックも、概念的には第1度、第2度および第3度洞房ブロックに分類される。
  1) 第1度洞房ブロック:洞結節の興奮は心電図には表現されないため、第1度洞房ブロックは通常の心電図法では診断できない。

  2) 第2度洞房ブロック:洞結節の興奮の心室への伝達が間欠的にブロックする状態をいう。房室ブロックと同様に下記の如く2型に分類される。 
    (1) 洞房ブロック第T型 (洞房間 Wenckebach周期, Mobitz T型洞房ブロック)
  洞房伝導時間が漸次延長し、ついにブロックし、以後は洞房伝導時間は短縮し、その後は再び洞房伝導時間の漸次延長を繰り返す。この際、洞房伝導時間の延長率は漸次減少するため、PP間隔が漸次 短縮し、洞房ブロックが起こった時点でPP間隔が突然延長し、以後、再びPP間隔が漸次短縮するリズムを繰り返す。このようなPP間隔の変化が出現する機序を下の模型図に示す。
    (2) 洞房ブロック第U型 (Mobitz U型洞房ブロック)
  PP間隔が突然延長し、基本リズムの整数倍(多くは2倍)になる(下図)。
 
 3) 第3度洞房ブロック(完全洞房ブロック)
;この状態では洞停止(sinus arrest)と区別できない。

3.第2度洞房ブロックの特徴的心電図所見の出現機序(時相分析図)
  下図に、第2度洞房ブロックの特徴的心電図所見が出現する機序を時相分析図として示す(単位:10msec)。

洞房ブロック時相分析図

  1) 第2度第T型洞房ブロック(上図)
   洞房伝導時間が漸次延長し、ついにブロックし、その後、洞房伝導時間は短縮し、以後、同様のリズムを繰り返す。この際、洞房伝導時間の延長の程度は漸次短縮するため,PP間隔は漸次短縮し、突然長い休止期があり、再びPP間隔の漸次短縮を繰り返す。

  2) 第2度第U型洞房ブロック(下図)
  洞房伝導時間が漸次延長することなく、突然、ブロックを生じる。そのため、PP間隔が突然基本リズムの2〜整数倍に延長する。

4.洞房ブロックの心電図の実例
 1) 第2度第T型洞房ブロック (洞房間Wenckebach周期)

洞房ブロツクの心電図(第2度第1型)

 心電図所見
 PP間隔が漸次短縮し、突然,PP間隔が延長し、以後は再びPP間隔が漸次短縮するリズムを繰り返している。典型的な洞房間Wenckebach周期の心電図である。

 2) 第2度第U型洞房ブロック (第2度Mobitz U型洞房ブロック)

第2度第2型洞房ブロツクの心電図

 心電図所見
 第3〜4心拍間および第4〜5心拍間で、突然、基本心周期(第1〜2心拍間)の2倍に延長している。

5.洞房ブロックの臨床的意義
  既述したように、洞房ブロックは洞不全症候群の表現であるため、その臨床的意義は洞不全症候群と同様である。めまい、失神などの自覚症状があれば、ホルター心電図検査、心臓臨床電気生理学的検査などを行い、洞結節の機能評価と心停止時間などについて検討しなくてはならない。心停止時間が5秒以上ある例ではペースメーカー植え込み療法の適応がある。

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