QT延長症候群

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QT延長症候群の目次

項目
1. QT延長徴候群の分類と各型の頻度(下記)
2. QT延長症候群の遺伝子別に見た心臓発作の誘因
3. QT延長症候群の心電図所見
4. QT延長症候群の診断基準
5.QT延長症候群における低浸透度
6.QT延長症候群における負荷試験の意義
7.QT延長症候群における運動負荷試験
8.QT延長症候群におけるアドレナリン負荷試験
9.QT延長症候群の心電図の成因
10.QT延長症候群の予後
11.QT延長症候群の治療
12.Andersen症候群
13.Timothy症候群

1.QT延長症候群の遺伝子による分類と各型の頻度

1.先天性QT延長症候群とは

  心電図上、QT間隔延長と失神発作を示し、血縁者に急死例がある場合には遺伝性QT延長症候群と呼ばれ、Jervell,Lange-Nielsen症候群、Romano-Ward症候群などが知られている。Jervell,Lange-Nielsen症候群とは、JervellとLange-Nielse(1957)が異常なQT間隔延長、先天性聾を伴い、急死の頻度が高い常染色体性劣性遺伝を示す家系について報告して以来、そのような呼称で呼ばれるようになった症候群である。

Romano-Ward症候群については、Romano(1963)およびWard(1969)が先天性聾を伴わない同様の家系について報告し、常染色体性優性遺伝を示すことを指摘した。

これらの症候群にみる失神発作や急死は、torsade de pointes(トルサード・ド・ポアンツ)などの多形性心室頻拍によるが、これらの不整脈はQT間隔延長と密接な関連があるため、広義にQT延長症候群(long QT syndrome、 LQT)と総括的に呼ばれている。

2.QT延長症候群の分類 

 1)QT延長症候群の従来の分類
   従来、QT延長症候群は、臨床的立場から次のように分類されてきた。

先天性QT延長症候群 Romano-Ward症候群
Jervell,Lange-Nielsen症候群
後天性(二次性)
QT延長症候群
電解質異常(低K,低Ca,低Mg血症)
薬剤性(抗不整脈薬、向精神薬)
中枢神経障害(脳出血、脳梗塞)
その他(心筋梗塞、心筋炎、
僧帽弁逸脱、急性肺性心など)

2)QT延長症候群の遺伝子型による分類

 近年、QT延長症候群症例において、心筋細胞膜のイオンチャネルをcodeする遺伝子の異常が次々と発見され、現在、QT延長症候群は下表のように遺伝子異常の種類により分類され、Romano-Ward症候群は8型、Jervell, Lange-Nielsen症候群じゅあ2型に分類されており、薬剤性QT延長症候群についても既に3型が明らかにされており、今後さらに多くの遺伝子異常が見いだされる可能性がある。

 これらの各遺伝子異常に基づくQT延長症候群の各群の頻度は下表の如くである。

 先天性QT延長症候群のうち、最も多いのはLQT1およびLQT2で、それぞれ40%前後の頻度を占めている。これらにLQT3を加えると、LQT1-3の3種類で、LQT全体の80-90%を占めることとなり、これらの3種類のLQTについて知ることが臨床的立場からは重要であるといえる。

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QT延長症候群の遺伝子別に見た心臓発作の誘因