症例2の解説

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 この心電図は一見正常のように見えるが、注意深く観察するとST間部 (ST segment) 延長に気付く。このようなST間部延長によるQT間隔延長は低カルシウム血症に特有の心電図所見である。本例の血清カルシウム濃度は6.7mg/dl (正常:9〜11mg/dl) と著しく低く、これが本例の低Ca血症心電図の原因であることは明らかである。

 それでは、本例で低Ca血症が何故起こったのであろうか? 副甲状腺機能検査で、燐クリアランス低下、燐再吸収率上昇を認め,Ellsworth-Howard試験で副甲状腺ホルモン静注に対する燐クリアランス上昇程度が低下していた (正常では2倍以上、本例では1.2倍)。本例の副甲状腺ホルモンの基礎値は正常で、EDTA負荷により上昇し、副甲状腺そのものの機能低下は考えられない。しかし、尿中cyclic AMPは副甲状腺ホルモン負荷によっても増加せず、副甲状腺ホルモンに対する効果臓器の反応性低下が考えられた。

 以上の所見から、本例は偽性副甲状腺機能低下症と診断された。この例は、テタニー発作、トルーソー現象などの副甲状腺機能低下症に典型的な症状を示していたが、ハイタケロール(hytakerol、dihydrotachysterol, DHC)を図の如く投与し、症状の改善と共に、血清Ca値の上昇、血清P値の低下を認め、心電図上に見られた低Ca血症心電図所見も正常化した。下図は本例の臨床経過を示す。治療により低Ca血症の改善と共に心電図所見も正常化した。

症例2経過

診断:偽性副甲状腺機能低下症に基づく低カルシウム血症

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