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第21例:
症例:12歳、男性
主訴:チアノーゼ
臨床的事項:出生直後からチアノーゼを指摘されている。ことに運動後に著明で、座り込んでしまうことが多い。手指尖端は丸みを帯びて太くなっている。L2(第2肋間、胸骨左縁)にPMI(雑音最強点、punctum
maximum of intensity) がある駆出性収縮期性雑音(Levine 6度)を聴取し、その部にthrillを触れる。
下図に本例の心電図を示す。
質問:
1.リズムは?
2.QRS軸は?
3.心房負荷はあるか?
4.心室負荷はあるか?
5.心電図所見及び心電図診断は?
6.この心電図から最も考えやすい臨床診断は?
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まず質問への解答を示します。
1.リズムは? 洞調律
2.QRS軸は? 著明な右軸偏位
3.心房負荷はあるか? 著明な右房負荷 がある。
4.心室負荷はあるか? 著明な右室肥大(右室収縮期性負荷)
がある。
5.心電図所見及び心電図診断は?
1) 洞調律
2) 右軸偏位
3)
右房負荷
4)右室収縮期性負荷
6.この心電図から最も考えやすい臨床診断は? ファロー四徴症
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第21例解説:
洞性P波を認めますから洞調律です。洞性P波とは、第1, 2誘導、V5, 6で陽性で,
aVRで陰性のP波を言います
QRS軸は著明な右軸偏位を示しています。第1誘導のQRS波の平均振幅(陽性波と陰性波の振幅の代数和)が陰性ですから、QRS軸は時計回りに+90度から−90度の間にあり、右軸偏位と診断されます。
第2、第3誘導, aVF, V1で、P波が尖鋭ですから右房負荷と診断します。ことに第2誘導P波の振幅が2.5mmを超えており、右房負荷の診断基準を満たしています。しかし、右房負荷があってもこの診断基準を満たさない場合が多く、基礎疾患の存在と右側胸部誘導の尖鋭なP波の所見から診断する場合が多くあります。
V1でR波が著しく高く(>5mm), かつR/S比≧2の条件を満たしているので右室肥大と診断します。左側胸部誘導でS波が深い所見も右室肥大を支持しています。
右室肥大は、右室収縮期性負荷と右室拡張期性負荷に分けます。
右室収縮期性負荷の場合は、典型的な右室肥大心電図を示します。私たちが用いている右室肥大診断基準は下記の3項目の内、何れか1項目を満たせば右室肥大と診断します。
1) V1のR波≧5mm, かつR/S≧2、
2) V6のR/S<1,
3) +110度を超える著明な右軸偏位
右室肥大を起こす代表的疾患は次のような病気です。
肺動脈狭窄、ファロー四徴、原発性肺高血圧、二次性肺高血圧、僧帽弁狭窄など。
右室拡張期性負荷の際には、心電図は典型的には不完全右脚ブロック所見を示します。これは右室拡張のために右室壁に分布する刺激伝導系が引き延ばされるためとの説明もありますが、右室流出路肥大のためとの考えの方が有力です。
右室拡張期性負荷を起こす代表的疾患は、二次孔型心房中隔欠損症、三尖弁閉鎖不全、肺動脈弁閉鎖不全, Ebstein奇形、肺静脈還流異常などです。心房中隔欠損症が頻度的に最も多いため、先天性心疾患で、心電図が不完全右脚ブロックを示す場合には真っ先に「心房中隔欠損症」を考えます。
本例はの心電図は「右室収縮期性負荷」心電図です。チアノーゼ性先天性心疾患ですから、ファロー四徴症が最も考えられます。