目次へ 第48例

 心房(ないし心室)に頻回の刺激を与え、それを突然 中断すると心房(ないし心室)の自動能に抑制がみられる現象は、overdrive suppressionとして生理学領域では古くから知られていました。この現象を利用して、洞結節の機能を評価する方法がMandelら(1971)およびNarulaら(1972)により発表されました。 

 この方法は、心房内に先端に電極がついたカテーテルを挿入し、心房を頻回刺激し、それを突然中断した際に認められる洞結節自動能の抑制の程度により洞結節の機能不全の程度を評価する検査法です。 

 通常、自己の心拍数よりも少し速い程度の刺激頻度で30秒〜1分間程度、心房ペーシングを行うことから始め、刺激頻度を10回/分ずつ増加し、200回/分前後まで増加します。各刺激頻度のペーシングの際に、最後のペーシング刺激によるP波からペーシング中断後の休止期に出現する最初のP波までの時間を洞結節回復時間(sinus node recovery time, SRT) と呼び、その最も長いものを最大洞結節回復時間(max SRT)と呼びます。通常、心房刺激頻度としては120〜200/分を用いますが、まれに200/分以上の心房刺激を加えて初めてmax SRTの延長を認める例があります。

 下図にoverdrive suppression testによる洞結節回復時間(SRT)の測定方法を示します。

 max SRTの正常値は1073±63msecで、この値が5000msec以上に延長している場合は洞不全症候群と診断します。このmax SRTは、ペーシング前の心拍数と密接な関係があるため、maxSRTを心拍数により補正する目的で、SRTからペーシング前のPP間隔 (洞周期)を差し引いた値を補正洞結節回復時間 (corrected sinus node recovery time, CSRT) と呼び、その正常値としては 260±98(100〜525) msec という値を示し、この指標が洞不全症候群の診断に有用であることを指摘しています。この値が500msec以上であれば洞不全症候群と診断します。

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