二次性QT延長症候群

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1. 二次性QT延長症候群とは?
2. 向精神薬による二次性QT延長症候群(症例呈示)
3. 向精神薬による二次性QT延長症候群(解説
4. 低K血症による二次性QT延長症候群(症例呈示)
5. 低K血症による二次性QT延長症候群(解説)

1. 二次性QT延長症候群とは

 QT延長症候群とは、心電図上 QT間隔の延長を示し、トルサード・ド・ポアンツ(torsade de pointes, TdP)型の心室頻拍をおこし、しばしば心室細動から急死にいたる重篤な疾患である。QT延長症候群の原因としては、先天的な遺伝子異常により起こるものと(先天性QT延長症候群)、遺伝子異常はなく、薬剤、電解質異常、その他の後天的な要因により発症する病型(後天性QT延長症候群、二次性QT延長症候群)とがある。

 二次性(後天性)QT延長症候群を惹起する病因としては、下記のようなものがある。

薬剤 抗不整脈薬 T群薬 硫酸キニジン、プロカインアミド、ジソピラミドなど
V群薬 アミオダロン、ソタロールなど
向精神薬 三環系抗うつ薬、フェノチアジン系向精神薬
抗菌薬 エリスロマイシンなど。
抗潰瘍薬 シメチジンなど。
抗アレルギー薬 テルフェナジンなど。
高脂血症薬 プロブコールなど。
電解質異常 低K血症、低Ca血症、低Mg血症
徐脈性不整脈 房室ブロック,洞不全症候群、その他の高度徐脈
心疾患 心筋梗塞、心筋虚血、心筋炎、僧帽弁逸脱、重症心不全
中枢神経疾患 くも膜下出血、頭部外傷、脳血管障害、脳手術後など
その他 甲状腺機能低下症、低体温、有機リン中毒など。

 堀江は、原発性アルドステロン症による低K血症により発症したQT延長症候群および房室ブロックによる高度徐脈を契機として発症した二次性QT延長症候群と思われる例で、先天性QT延長症候群の際に見るような遺伝子変異を認めたことを報告している(堀江稔:循環器科46:297,1999)。

 したがって、臨床的に明らかな二次性QT延長症候群と思われる例においても、その背景に潜在的な遺伝子異常が伏在している可能性があることに留意する必要である。これらの例では、本来、遺伝子異常によるQT延長症候群の素因を持っているが、その遺伝的負荷が比較的に軽いために、心電図上もQT間隔の延長を起こすことなく、正常に経過していたが、低K血症(原発性アルドステロン症による)や著明な徐脈(高度房室ブロック)を引き金として症状の顕性化がおこり、QT延長症候群を発症したものと思われる。

 このような現症は、他の領域でも発表されている。酵素欠損による溶血性貧血が、薬剤内服(キニーネなど)を景気として顕性化されて溶血発作を起こす例などもこのような機序が関与している。

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