Brugada症候群8タイトル

トップページへ Brugada(9)へ Brugada(7)へ

Brugada型心電図記録における高位右側胸部誘導の意義

 Brugada症候群と診断するには、saddle-back型心電図を示すのみでは不十分で、coved型の心電図を示すことが必須要件です。そのために薬理学的負荷試験の実施が勧められていますが、この方法には重篤な不整脈誘発の危険があり、一般診療機関で手軽に実施することには問題があります。

 徳島地区では、徳島大学循環器内科、徳島赤十字病院に紹介して実施して頂くのがよいと思います赤十字病院ではBrugada症候群に対する薬理学的負荷試験は外来では実施しておらず、入院の上、実施しているとのことです。

 従って、薬理学的負荷試験よりも簡便な方法が求められます。この方法が「高位右側胸部誘導心電図の記録」です。実施方法は簡単で、通常のV1-3(第4肋間)に加えて、第3,第2肋間でのV1-3に対応した部位での胸部誘導を記録する方法です。

 Hisamatsuらは、Brugada型心電図を示す17例(Type 1:4例、Type 2:5例、Type 3:8例)において、第3肋間でのV1-3誘導心電図を記録し、Type 1が11例に増加し、Type 2は5例で、Type 3は1例に減少したことを報告しています。下図はその結果を分かりやすく図示したものです。すなわち、通常の胸部誘導記録ではcoved型が4例(23.5%)のみでしたが、第3肋間でのV1-3を記録すると、coved型が11例(64.7%)に増加しています。

高位右側胸部誘導の有用性
左側は通常の部位で記録したV1-3誘導
心電図波形と例数;右側は1肋間上で
記録したV1-3誘導心電図波形と例数

 また、206例の男性の心電図の連続記録において、第4肋間で記録したV1, 2の心電図がBrugada型心電図(saddel-back型を含む)を示していない例において、第3肋間で記録したV1, 2がBrugada 型心電図を示した例が9例(4.4%)あり、内Type 1は1例(0.5%)、Type 2,3は各4例(1.9%)であったことを報告しています。すなわち、通常の心電図記録で正常と考えられていた男性例で、第3肋間でのV1, 2を記録すると その4.4%がBrugada型心電図を示し、0.5%はcoved型を示したとの報告です。

 下図は、通常のV1-3ではsaddle-back型でしたが、第2,3肋間でのV1-3を記録することにより、極めて典型的なcoved型心電図を示した例の心電図の実例を示します(羽ノ浦町 土橋哲夫先生症例)。因みに、この心電図ではS terminal delayが0.08秒以上ありますから、予後的に危険な不整脈を起こす危険があり、心臓電気生理学的検査の適応があると考えられます。

 下図は、安静時の通常の電極位置で記録した標準誘導心電図です。

高位右側胸部誘導の有用性(心電図)
定期健診時に発見された。V1,2がsaddle-back型ST上昇を示す(土橋哲夫先生症例)。

 下図は、同一例での1肋間上の胸部誘導心電図です。上図ではV1.2のST部がsaddle-back型ST上昇を示していますが、下図ではV1,2のST部が典型的なcoved型上昇を示しています。このような著明なST上昇が起ることは、通常の記録部位での心電図波形からは全く予想できません。

高位右側胸部誘導心電図波形
上に心電図を示す例では、
1肋間上のV1-3対応誘導で
記録すると、典型的なcoved
型ST上昇を認めた。

 このように、高位右側胸部誘導心電図記録は簡単で、かつ検出率を高いため日常臨床で広く用いられています。

Brugada症候群9へのリンク Brugada (9)へ