Brugada症候群21タイトル

トップページへ Brugada(22)へ Brugada(20)へ

Brugada症候群の予後(Brugadaら,334例,2002年)

 Brugadaらは、1998年に、本症候群の予後に関する調査結果を発表しました。しかし、この研究は63例と比較的少数例についての検討で、この研究に対する批判などもあり、2002年には334例についての詳細な予後評価に関する研究を発表しました。この論文の序文の中で、Brugadaらは「Brugada型心電図の予後的価値についての結論を出す」ためにこの研究を行った旨を記載しています。

 Brugadaらが、この2002年に行った研究対象を下図に示します。Brugadaらは334例を蘇生群(71例)、失神群(73例)および無症状群(190例)の3群に分けて検討しています。蘇生群とは、心停止に陥り、その後、回復・蘇生したBrugada症候群例です。失神群とは、Brugada症候群で失神発作の病歴がある例です。無症状群とはBrugada型心電図(cived型)を示すが、失神・重篤な心室性不整脈発作などを持たない例です。このcoved型には、基礎状態でそのような心電図所見を示す例と薬物負荷によりcoved型心電図波形を示す例を含みます。

Brugada症候群予後評価対象(2002)
2002年にBrugadaらが発表したBrugada症候群の予後評価に用いた研究対象

 これらの3群における基礎心電図異常(coved型を示すかどうか)、突然死の家族歴および臨床心臓電気生理学的検査における心室プログラム刺激による心室細動ないし多形性心室頻拍誘発率も上表こ示してあります。すなわち、蘇生群におけるこれら3項目の頻度は84%, 38%, 83%です。また、失神群では各85%, 39% および63%です。そして、無症状群における頻度は各58%, 72% および33%です。

 心停止群、失神群および無症状群における急死、心室細動などの心事故の出現率を下図に示します。 心停止群においては、平均54カ月の観察期間中に62%が心事故(急死、心室細動)を起こしています。失神群では平均26カ月の観察期間中に19.2%が心事故を起こしています。そして、無症状群においては平均27カ月の観察期間中に8.4%が心事故を起こしています。Brugadaらがこの研究で最も強調していることはこの点で、臨床的に何ら症状を示していないBrugada型心電図例(coved型)においても、その8.4%が重大な心事故を起こしている点です。

Brugada症候群心停止群、失神群、無症状群での心事故出現率
心停止群、失神群、無症状群の3群における経過観察期間中の新規心事故出現率

 下図は、この2002年におけるBrugadaらの研究成績のまとめです。基礎心電図ですでにBrugada型心電図を示す群では 心事故は14.4%におきていますが、薬物学的負荷試験により初めてBrugada型心電図を示した例では,1例も心事故を起こしていません。基礎心電図がBrugada型心電図(coved型)を示す群でも、心室電気刺激で心室細動ないし多形性心室頻拍が誘発されない群では、心事故の出現率は2.2%と低率ですが、、誘発可能例では心事故が17.1%の高率に認められています。

Brugada症候群の予後評価(Brugadaら、2002)
2002年の研究におけるBrugadaらの予後調査研究のまとめ

 この研究結果から、BrugadaらはBrugada症候群における予後評価に関連する事項を、有症状群と無症状群の2群に分けて、次のように結論づけています
 
1.有症状群:
   1) 性、家族歴、薬物負荷後のみの異常波形出現例、治療法は、予後予測と関連がない。
   2) 心室プログラム刺激による心室細動・多形性心室頻拍誘発は予後評価に有用である。
 2.無症候群:
   1) 基礎状態でのcoved型波形出現例、心室プログラム刺激での心室細動・多形性心室頻拍誘発可能例は予後評価に有用である。
   2) 女性例は予後良好である。
   3) 急死の家族歴は予後評価に有用ではない。


 以上の研究結果から、Brugadaらは、Brugada症候群における植え込み型除細動器(ICD)の適応を下記のように記載しています。
  (1) Coved型心電図+失神発作、
  (2) Coved型心電図+心停止からの回復例、
  (3) 無症状であるが、coved型心電図を示し、突然死家系and/or 心室プログラム刺激陽性例
  (Brugada JE et al: Circulation 105: 73, 2002)

Brugada症呼応群22へのリンク Brugada症候群(22)