Brugada症候群 (2)
Brugada型心電図がJ波の顕著化によることを述べたNierregaardの研究
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Brugada症候群(1)でBrugada 型心電図の3型への分類について説明しました。いわゆる第一次コンセンサス分類(2002)です(現在はLunaらの第3次コンセンサス報告が最も信頼性が高いと考えられています)。この3つの型に共通する所見は「J波の振幅≧0.2mV」という項目です。 J
waveとは一体どのような波でしょうか? 私達が心電図学の勉強を始めた頃から、低体温時にはQRS波の終了後に小さい陽性波が出現する事が報告され, Osborn波と呼ばれていましたが、実際に観察する機会はなく、興味を持ちながらも、一般臨床には無関係な心電図所見であると考えられ、あまり注目されていませんでした。
ところが、ここにきて、この波が日本に多い「ポックリ病」の不整脈基質の根幹をなす重要な所見であることが明らかになり、脚光を浴びるようになりました。
Brugadaが本症候群の特徴としてあげた下記の4つの所見、
1) 右脚ブロック、
2) 右側胸部誘導でのST上昇、
3) QT間隔正常
4) 失神発作
の内、1)と3)は正しくないことが間もなく明らかになりました。すなわち、QT間隔については、完全右脚ブロックを合併する例が少なくなく、また完全右脚ブロックほどではなくとも、軽度のQRS間隔延長を示す例が多くあり、心臓電気生理学的検査においてもHis-Purkinje系の伝導障害を示すH-V時間延長を示す例が多くあ
ることが報告されています。
「右脚ブロック」についても、真の「右脚ブロック」ではなく、「右脚ブロック様所見」と書くのが正しいのであり、実は、右脚ブロックのように見えるのはJ波の振幅増大とST上昇が一体となっているための所見であることが明らかになりました。
Brugadaらが、Brugada症候群の概念を発表したのが1992年ですが、1994年にNierregaardがAmerican Heart Journalに「Recurrent
syncope in a patient with prominent J wave」という論文を発表し、右脚ブロックではなく、J波増大によることを指摘し、この例でも心室細動が確認されています。
下図は このNierregaardの論文に発表された症例の基礎心電図です。この心電図のV1-3の心室群波形はBrugadaらの発表例と全く同様の所見(coved型波形)を示しています。
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典型的なBrugada型心電図を示す。Nierregaardは これをJ波の顕著化によると発表した。 |
本例は心室細動発作を起こしており、典型的なBrugada症候群に一致した所見を示しています。
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上図の例に認められた心室細動発作 |
上図は本例に見られた心室細動発作時の心電図です。基礎心電図波形はcovedcoved型のST上昇をしめしていますが、第3行目には比較的に連結期が短い心室性期外収縮が散発的に出現し心室細動に移行しています。