Brugada症候群18タイトル

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乳幼児突然死症候群(SIDS)とBrugada症候群との関連

  Brugada症候群は、我が国では、「ポックリ病」あるいは「青壮年急死症候群」などと呼ばれているように、成人男子に多く、その頻度は大凡0.1%前後であると考えられています。小児例は、成人に比べると頻度が少なく、大体0.01 %前後であると考えられています。 しかし、Brugada症候群(16)でも述べたようにBrugadaらが最初に経験したのは3歳の男児例でした。 乳幼児にみる突然死では、「乳幼児突然死症候群(sudden infant deathsyndrome, SIDS)が広く知られています。

 SCN5A遺伝子異常を有する1家系に乳幼児の突然死例が多発し、乳幼児突然死症候群が疑われた家系において、14カ月の女児で、一過性にBrugada型心電図を認め、この家系における多数の乳幼児の突然死が、Brudada症候群によるのではないかと推測されるような家系がPrioriらにより報告されています(Criculation 104:3081,2001)。下図にその家系図を示します。


Brugada症候群による急死例5例を認めた家系
Brugada症候群によると思われる5例の小児急死例が見られた一家系
(Priori,SG, et al: Lancet 355:508,2000)

 Pryoriらが報告している例は次のような例です。14カ月の女児が反復する意識喪失発作で来院しました。この意識喪失発作が心室細動であることが判明しましたので、直流ショック療法による除細動を試み、洞調律化に成功しましたが、脳虚血のために脳死状態になりました。本例はICUに収容されましたが、その際、一過性に下図に示すようなBrudaga型心電図が出現しました。

SIDS多発家系にみられたBrugada型心電図
乳幼児急死症候群(SIDS)多発家系で見られたBrugada型心電図(14カ月、女児)
A: 通常時、B:心室細動発作からの回復期に見られたBrugada型(coved型)心電図

  上図の家系図に示しますように、本例の2人の妹は3歳および2カ月で急死しています。その原因は不明です。内、3歳で急死した女児は、心室細動発作で来院し、直流除細動により洞調律化に成功しましたが、その際の心電図は「正常心電図」でした。しかし、その7か月後に不整脈死を遂げています。他の2人の兄弟は12カ月、14カ月で、それぞれ心停止を起こしていますが、これらの2人の心電図は正常でした。母の家族歴で兄弟1人が14カ月で急死しています。その他に、異母妹で反復するチアノーゼ発作を示しつつ生後12カ月で急死した女児があります。この例の心電図は正常心電図でした。


 このような乳幼児急死家系例の1人に、一過性にBrugada型心電図を認めたことから、PrioriらはSIDSのなかにBrugada症候群である例があり、乳幼児においても突然死の原因としてBrugada症候群が重要であることを指摘しています。

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