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Brugada型心電図を示した縦隔腫瘍例
Brugada症候群と診断するためには、単なるsaddle-back型の心電図所見を示すのみでは不十分で, coved
所見を認めることが必要です。しかし、、coved型を認めても、それで直ちにBrugada型心電図と診断して良いわけではありません。第10章で列挙したような右側胸部誘導でST上昇を惹起する多数の疾患を除外することが必要です。
Tarinら(1999)は、この点に関連して下記のような興味深い例を報告しています。
症例:66歳、女性
主訴:安静時の胸痛(前胸部痛)
病歴:3か月前から心悸亢進、安静時の胸痛を訴えるようになり、精査を希望して来院した。下図は本例の来院時心電図です。
心電図所見:心拍数は100/分前後の洞頻脈を示しています。QRS軸は左軸偏位です。この心電図で最も特徴的な所見はV1-3の著明なST上昇です。ことにV2では著明で、典型的なcoved型波形を示しています。
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来院時心電図(Train,N.ら:Pace 22(8):1264-1266,1999) |
下図は本例の胸部MRI画像です。前縦隔に腫瘍があり、心臓前壁、事に右室流出路前壁を腫瘍が圧迫している状態がよく示されています。
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本例のMRI画像 |
下図は本例の3年前の心電図です。
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3年前の心電図 |
この3年前の心電図にはV1-3のST上昇は全く認められず、正常心電図所見を示しています。