第1129例 電極装着ミス

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症例:44歳、男性
 今回は心電図のみの提示である。。この心電図に対して自動診断は下記の如く診断している。
 1)心房調律
 2) 下壁梗塞(時期不明)
  この自動診断は妥当であるか?皆様方の診断は?
 

解説
 この心電図は非常に奇妙な心電図です。  まず胸部誘導を見てみます。V1でP波が二相性で,陰性相の幅が広く左房負荷の疑いがあります(境界域所見)。胸部誘導のQRS波、ST部、T波およびU波は全て正常です。

 肢誘導では,第1誘導の振幅が著しく低く ,第2,3,aVF誘導の心電図波形が酷似しています。aVR ではP波は陰性ではなく、QRS波も相対的に陽性相が陰性相よりも大きく、このような波形をaVR誘導が示すことは考えられません。すなわち,肢誘導の電極装着ミスが考えられます。すなわち、6個の肢誘導心電図波形にaVRの波形はどこにも見当たりません。

 胸部誘導心室群波形は全く正常所見を示しており、経験的には胸部誘導がこのような正常波形を示す場合は、肢誘導も正常波形を示す場合が多いと考えられ、おそらく、本例は正常心電図例ではないかと推察されます。

 しかし6個の肢誘導心電図波形に,aVR 誘導が示すべき波形が認められないことから, 誘導ミスと判定されます。この心電図では,どのような電極装着ミスが起こっているのかは推察できません。従って,左房負荷(疑)、正常胸部誘導心電図が考えられますが、このような心電図に基づいて心電図診断を行うことは適切ではありません。検査室で心電図を記録した時点において,電極装着状態をチェックし, 心電図の再記録を行うべき例です。

心電図診断: 肢誘導電極装着ミス

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