第1125例 心房細動、不完全右脚ブロック、下方早期再分極、左室負荷、
左室負荷を心房細動とのみ診断

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症例:80歳、女性
添付fileは 本例の心電図です。標準12誘導心電図と標準肢誘導のlong strip記録を示します。自動診断はこの心電図に対して、「同型P波なし。RR間隔の変動著明。心房細動」と診断している。また外来担当医は、この心電図に対して心房細動との診断のみをカルテに記載している。これらの診断は妥当であるか?
皆様方の診断は?

標準肢誘導

標準12誘導心電図

解説
 下図に本例の標準肢誘導心電図の解説図を示します。RR間隔は全く不規則で(絶対性不整脈)、P波がなく、基本リズムは心房細動です。また第2,3誘導に軽度のST低下所見を認めます(左室負荷/冠不全)。第2誘導のQRS波終末部には低いノッチがあり、J波と考えられ、下方早期再分極所見を示しています。

標準肢誘導解説図

 下図は標準12誘導心電図波形のの解説図です。P波がなく、絶対性不整脈があり、基線の細い動揺(細動波、f波)があり、心房細動所見を示しています。第2誘導のQRS波終末部にJノッチがあり、下方早期再分極所見を認めます。V1のQRS波は分裂し、不完全右脚ブロック所見を示しています。V3-6誘導にST低下があり、左室負荷ないし冠不全所見も認められます。

 下図は第2,3誘導の拡大記録です。J波とST低下所見を一層明瞭に認めます。

 以上から、本例の心電図診断は、外来担当医が診断しているような心房細動だけではなく、下記の4つの所見が認めます。
 1) 心房細動
 2) 冠不全(左室負荷)
 3) 不完全右脚ブロック
 4) 下方早期再分極

 この外来担当医のように、自動診断のみに依存して不十分な心電図診断を行うことなく、自己の意思により適切な心電図診断を行い得るように普段から心がけることが大切です。

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